私と君は、二人でエレベーターに乗り、ものすごい速さで上がっていきます。
私は、何度も何度も頻繁に腕時計を見て、残り時間を確かめています。
そう、私も君も、お互いの寿命を知っているのです。
ですから、残りの時間をできる限り修行に費やして、できるだけ心を磨いていたのです。
私と君は、あともう少しで天国に到達できる、という段階で、
途中から乗る人達の為に、いったんエレベーターが止まり、私はその時間さえももどかしい。
しかし、エレベーターで上がる過程で、私達は全ての人が救われる事実を知りました。
百階に到達する直前、八十数階ほどの高さで、二人でエレベーターを降りて、
草原の中の道路を行くバスに、二人で乗りました。隣同士に座りました。
そのバスは、浄土に向かうバスで、まっすぐ西へ向かいました。
しかし、私は自身の腕時計を見て、もう一分を切る事を知り、君の手を握り、
「ごめんね、今回の人生は、私が先に終わるみたいだ。一緒に神様にお祈りしよう」
そう言って、貴方と合掌して、短い黙とうを捧げました。
二人して、涙ながらに眼を合わせて「愛しているよ」と伝え合い、私はバスを降りました。
世界は輝いて見えた。今までの苦しみも、人を愛せた喜びも、全てが幸せで、
私達は、この世は一切皆苦であり、四苦八苦の世界でありながらも、全てが尊いと気づきました。
私は、徒歩で西へと向かいました。
